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さらし文学賞
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はらぺこマービンお化け屋敷へ行くの巻~Rvengetothegiant monkey~


「おうい…まってくれぇ…」
途方に暮れていた。
「くそったれ…あいつら…」
暗闇の中たった独りで仲間を探すは恐ろしいことだと思った。
また問題はそれだけではなかった。
「うおおおおおん!うおおおおおん!」
順路であるこの部屋からの出口で男性が死にかけの羊のよがりのようなうめき上げてる。
その背中一面中にはケッチャプがぶちまけられていた。
「うらめしぁぁぁ…うらめしぁぁぁ…」
どうやら彼は羊よがりとケッチャプの2点を持って「廃病院に夜な夜なあらわれる怨霊(生前に改造手術…もとい人体実験済み)」を自称しているらしい。
「あの…ちょっ…」
「うおおおおおん!うおおおおん!」
話が通じない。
この幽霊は必要以上に仕事熱心のようだ。
完璧に役に入り込んでいる。
なんでこんなことになってしまったのか。
私は眉間のあたりを揉んだ。

今日は修学旅行。
行先は某有名テーマパーク
そう、一生の記憶に残るタノシイ体験になる。
はずがなかった。
私は自分の通う学校が嫌いだった。
今の学校はもともと志望校ではない。
本来はより偏差値の高い学校を目指していた。
実力があった、内申点も悪くなかった。
運は悪かった。
受験当日、私が会場に向かう途中のこと、
信号待ちをしているといつの間にかおばあさんが隣に立っていた。
自分の半身より大きな荷物を持つ姿、頼りげなく荷の重さに小刻みに震える。その姿は受験で心の余裕がない者にさえ仏心を起こさせるのに十分だった。
「おばあさん俺が荷物を持ちましょう」
この一言がいけなかった。
老婆からひったくり同然に奪った(もちろん親切心に基づいてるが)大荷物の中から突然黒い影が飛び出し私を押し倒した。
何が起こったかわからぬうち、黒い影は恐慌に満ちた群集の中に消えっていた。
手負いの巨大なサル(身長約2、5m)がその界隈をひっかきまわしたことを知ることになるのはわたしが退院してから3週間後であった。
とにかくその場から救急車で病院に運ばれた私は志望校を受験することができず、結果、滑り止めで受けていたこの学校に入学することになった。
学校に入ると世界が急変した。
周りにアホが溢れたのだ。
入学した学校は思った以上にレベルの低いものだった。
あほども間に入り会話するということが何一つ理解できなかった、
いや、バカどもの娯楽、及び話題が余りにも次元が低いせいだ。
私は口と耳をつぐむことにした。
もはや全てが過ぎ去るのを待つしかない。
休み時間私は一人ぽっちで絵をかいて過ごしている。

「…君もさ、お化け屋敷に行かないかい。」
2年生の春、修学旅行の班決めの時間、その時期マイブームであったぶつぶつと呪詛を唱える私に声をかけるものがあった。
クラスの輪から外れた4人の天パーの集合である。
所謂「イケてないグループ」であった。
入学してこのかた、生徒に話し駆けられたことのない私はいったん思考停止した。
(この私に話しかけるだと、バカどもからおちこぼれたカスどもが、くっ。いいだろう貴様らには予想もつかないだろうレヴェルの高い返しをしてやる)
「…わかめ」
「やっぱりあんまり話したこともない僕らに話しかけられるのは迷惑だよね…」
「ちょっ…」
こっちが話してる途中だぞ!人の話を聞け!
「あの…えと」
おかげでテンパって何言おうか忘れてしまったぞ。んとえーと
「ん?なに?」
そう!これが回答だ一山30円のわかめども!
「い、いっしょうに、でゅふ…つれってて…です。はい、はい」
「…ぅえ…あ…うん…」
文字通りの二つ返事だった。
初めて友達(と呼んでいいだろう)と「約束」を交わした。
それだけで世界が輝いたようであった。
あんなに憎んでた修学旅行までもうイケイケゴーゴーって感じぃ。だった。(それ以降なぜかわかめ君たちから話しかけられる機会はなくなったが)
そして修学旅行当日、私は重大なことを思い出した。
私は怖いものが苦手なのだった。
テレビで心霊特集をやってたら即電源をコンセントから切り、布団に潜り込むほど。
今日頼れるものは、いつも持ち歩いてる交通安全のお守りしかなかった。
だからわかめ君たちが提案した、はぐれると怖いから手を繋ごう。
というのは地獄で仏であった。
お守りと仲間の手を握りしめていたおかげで(途中5回ほどちょっとゆるめて、ゆるめて、痛いよ。とささやきが聞こえたが無視した)
順路半ばまで進めたことはよかった。
この狭い小部屋に来たとき幽霊の襲撃に合った。
皆全速力で逃げ出したが、5人というお化け屋敷に入るにしては大人数であったため幽霊もいかに捌こうか迷ったらしい。
4人を追いかけることに成功したが私を背後に見逃した。
そして、幽霊としての仕事を完成させるため出口あたりで後ろから逃げて行った者たちを追い立てることになった。
出口の大きさは1人がやっと通れる程度。
そんなこんなで未だに幽霊ががんばってしまっているため私は部屋から出られないのだ。

お化けがで仲間を追い立ててる
くっそちょう怖い。
はやくコンセントを切って布団に…
いや、これは心霊番組じゃない、リアルなんだ。
ああどうにもならない。
もはや全てが過ぎ去るのを待つしかない。
私は口と耳をつぐむことにした。
あれ、これって…
腹のなかでどろりとしたものが形作られていくのを感じた。
目がちりちりした。
たまらず瞼を下げる。
そうすることで思考に感覚が集中していくのが感じられた。
コレッテ…
日常風景が脳内で再生される。
いつも独りノートの隅に絵を描いていた。
この絵は腹を空かせたオオカミ、腹ペコマービン。
作業をするためのBGN(バックグラウンドノイズ)は奴らの馬鹿笑い。
キャハハ ギャハハハ  ゲヘヘヘヘ
こうやって毎日毎日俺は机の上でやんになっちゃってた。
お分かりになるだろうか畜生どもの群れに放り込まれた私のつらさ!
オレはあいつらとは違う。
だからこそ話を聞かないし、話もしない。
あのサルみたいに手をたたいバカ笑いをするあいつらとは。
チガウンダ!
感情の高ぶりに伴って眉間にぐっと力が入ると。
意識が遠のいて行った。

目を覚ますといつの間にか椅子に座らされていたらしいことがわかった。
気絶した私を誰かが運んでくれたんだろうか。
気分がいくらかよくなってる。
介抱までしてくれたのか。
しかし、突っ伏していた顔を上げるとそうではないらしいことに気付いた。
教室だった。
途端、腹の中のどろりとしたものが復活した。
だれだ、クソ…なんで…
不意に、右頬に温度を感じた。
そこにはクラスメートらしきものがいた。
ただいるだけでなく私に話しかけているらしい。
「…あの」
応じようとしたその時、私の顔を何かが覆った。
それがマービンをかたどった仮面だとすぐに知れた。
クラスメートは仮面が見えないのか驚きもせずに語りかけてくる。
だが。聞き取ることはできない、もう、仮面が耳をつぐんでしまったから。彼の顔は険しくなる。
そのことを伝えることもできない、仮面が口もつぐんでしまったから。
でも彼は止めない。
それどころか形相は一層激しくなり、いまや私をののしるかのようになった。
私は彼が誰か知りたかった。
こんなになって私に話しかけようとする人間などいなかったはずだから。
だがわからなかった。
仮面は目までつぐんではいなかった。
見えてるのにだれかわからなかった
学校の人間に無関心だったせいだ。
全てを安心のままにするために諦めたはずだった。
しかし安心を得るどころかこんな危機に陥っていた。
私が状況を打開しようと眉間を揉みながら考えていると、
無価値な罵りを続ける彼に変化が訪れた。
あまりにも激しくなりすぎた怒りの面相が歪みはじめたのだ。
(おいちょっと)
私にはこの一言を出すことができなかった
歪みはついにとまった。
哀しみの形相だった。
それはどうにもならない私を哀れんでいるかのようだった
…哀れまれてるだと、よりによってクラスメートに、
みるな、そんな目で俺を見るな!
構うな!俺は貴様らみたいなサルじゃねえ!一匹オオカミなんだ!このマービンなんだ!
手前らみたいなサルどころか2.5mのボスザルにも負けねえ!そうなったら!そうだったら!

腕を払った。
するとクラスメートは煙のように消えてしまった。

ギャハハハ!△△クンチョウシワルソウダカラサア!ホットイテヤリナヨオ!

エ~!ダッテ△△クンイツモネタフリシテンフダモ~~ン!ウケル~!

危機は去った。だのになんだろうこの気持ち。
まるで食道に生暖かい油を流し込まれてるような気分。
腹の中にある黒いどろりとしたものは今やトグロの形をとっていた。

「…ですか!?」
鋭い声が耳に飛び込んできた。
私は未だにお化け屋敷で倒れているらしいことを知った。
握りしめられていたお守りは汗でびっしょびしょになっている。
固い床に横たえられていた苦痛にきしませながらふらりと上体を起こした。
「大丈夫ですか!?」
一体誰の声だ…
顔をあげた。
今度は何者かが分かった。
ケチャップを顔にまで飛び散らせている幽霊が心配そうに私を覗きこみながら話しかけてくる。
何とも奇妙な光景であった。

死に掛けのひつじの声を上げていたものが一匹狼の身をあんじている

…だがオレハ知っていた。
BGNに騙されないでノートの隅に目を向ければその絵は一匹狼マービンなどではない。
毛を刈り取られ丸裸で群れから取り残された貧相な子羊マービンであった。

ケッチャプ幽霊の心配そうな顔が近づく。

…ああ、あの目だ。
サルから間抜けな幽霊まで、この世のすべてがオレを哀れむ。
そんなこと耐えられない。
ならどうする。
「…」
渦巻く暗黒のとぐろが浮いた。
それは天上まで飛び立たんとする竜の様だった。
「…いてくれ」
「はい?」
なんだ。その間抜け面。瀟洒なケッチャプ染め白衣が台無しだ。
「どいてくれ…!」
のどから絞り出した。
「へ?」
瞬間、私が暗がりの底に横たえていた体が飛び上がる。
「ウワアア!」
悲鳴。そのあとに大きな衝突音。
幽霊が吹っ飛ばされたようだ。
暗黒の竜からはほの暗い満足感が胸にしみだしていた。
心臓が満足汁の喜びに強く鼓動する。
同時に背中一面の皮膚が粟だった。
凄まじい悪寒ガスル。
やばい。にげろ。ナニカラ?
やばいやばいやばいやばい。
「きさまらああああ!!」
自分の声のでかさに驚いた。
「さるとわかめのもりあわせのくせにいいいいいいいいいいじゅうううううううじつしてやがってええええええ!!!」
絶叫のロケットエンジンが噴射した。
いままで口をつぐんでいたからあたりまえである。
体がぐんぐん加速する。
自分が運動音痴であることが信じられない。
ナニコレコワイ。
手から汗を吸って重くなった交通守りが滑り落ちた。
速度を縛るものがなくなった!!
精神と肉体が制御不可能な速度まで加速する
全身が酸素を求め悲鳴を上げている。
このままじゃ体がバラバラになってしまう。
通路の遙か後ろからケッチャプ幽霊のサケビ声が聞こえる。
つぐんでいた耳はどんな音でも拾えるようになっていた。
かひゅ。
苦しみのあまり喉が鳴る。
かまいやしない。
かひゅ。
息を取り込むたびに喉を焼かれている。
知っての通りお化け屋敷の闇の中は毒の瘴気で満ちているのだ。
だが、安心していただきたい。
この毒とコントロール不能の疾走によって私の肉体はあの気高き一匹狼、マービンへのトランスフォームが可能になるのだ。
だから止まらない、止まったら倒れてしまう。
勢いを失った独楽のように。
だから、はやくみつけろ、暗黒の中に。
倒れる前に、倒れるまで。
進め。
暗黒竜が語りかける
マービンヨサルドモヲコロスノデス。

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