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さらし文学賞
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動く人影


 八月のある日、私、あさみと、いつも一緒にいるゆいっち(ゆい)となっちゃん(夏希)は、肝試しをするために高校に来ていた。
「ね、ねえ…。本当にやるの?」
 私は、そう問いかけたのだが、
「なーにぃ?怖いの?」
「ゆいっち~、だ、だって…」
「もうここまで来ちゃったんだからさ、やるっきゃないでしょ?」
「…そうそう…。…ここで帰るのはただのヘタレ…」
「うう~、なっちゃんまで~」
 どのみち、真っ暗な道を一人で帰るのは無理な話だ。
(はぁ…怖いな…)
「じゃ、ルールね」
 昇降口より入り、確認のために通ったルートで対角にある音楽室に行く。
 そこに先ほど置いたコインを取って帰ってくる。
 明かりは、ろうそく一本。一応、火が消えてしまったときのためにチャッカマンも持っておく。
「じゃあじゃあ、あたし行って来るね~」
 ゆいっちが、一番に名乗り出た。
 止める理由もないので、なっちゃんと二人昇降口で待つ。
「…あさみ…、震えてるね…」
「だ、だって、本当になんか出てきそうで怖いよ…」
「…そうじゃなきゃ、肝試しじゃない…」
「う、そうだけどさ…」
 そうこうしているうちに、ゆいっちが帰ってきた。
「はいよ、これが課題のコイン!」
「…確認…。じゃあ、次は私が行くね…?」
「あ、うん、わかった」
「き、気を付けてね?」
「…うん…」
 そして、なっちゃんも出発した。
「ね?大丈夫だって」
「そういう問題じゃないって…」
 他人が大丈夫でも、自分は違うことも多い。
 今がまさにそのときだ、と私は思っていた。
 と、なっちゃんも帰ってきた。
「…はい、つぎはあさみ…」
「いってらっしゃ~い」
 二人に手を振られながら私は校舎の中に入った。

「えっと、まずは………、ん?あれ、なん……」
 ろうそくの火で、人影が浮かび上がった!
「きゃあああぁぁぁぁあ!?」
 思わず悲鳴を上げ、しゃがみ込む。
 そのまま待つこと1分。
 何も、起こらない。
「…あれ?」
 見ると………制服を着たマネキンだった。
 ふぅ、とため息を漏らし、呟く。
「絶対、笑ってるんだろうなぁ…」
 あんなみっともない悲鳴、上げるんじゃなかったなぁ、と思うも、今更だろう。
 廊下を歩いていると…急に、窓がガタガタッとなった!
「きゃあああああぁぁぁ!?」
 再び、しゃがみ込む。
 が、今度はすぐ気が付いた。
「なんだ…風、か…」
 窓の外、桜の木の枝がすごい勢いで揺れている。
「ポ、ポルターガイストかと思った…」
 ほっ、と息を吐く。
「うう~、また絶対笑われた~!」
 悔しい。
 あの二人は悲鳴など一回も出していなかったのに、私だけですでに二回。
 もう、いやだな…。
 でも、途中で帰ったりしたら何を言われるか…。
「い、行くしかないよね…。うう…」
 歩みを進める。
 なんとか、音楽室へ到着し、コインを手に入れられた。
 帰り道も、なんとか、無事に行けた。
 異変は、昇降口で起きた。
 明かりが、ない。
 待機用にランタンを持ってきていたのに…。
 消してしまったろうそくに火をつけようとしたら、辺りが明るくなった。
「あ、よかっ………え?」
 その光は、緑。
 恐る恐る、視線をめぐらすと………、
「ひ、ひとっ…!?」
 緑色の、光…いや、火の玉。
 人魂が、二つ中を漂っていた。
「あ、あ、あ………」
 カタン、カタン、と音がする。
「え…?」
 ギ、ギ、ギと音が鳴るように、首を回すと、
「ひっ………」
 マネキンが、手を振っている。
 ガバッ!
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「うわっと!?」
 ………え?
「いやー、まさかここまでびっくりするとはね~」
「…ゆいっち…?」
 今、後ろから抱きついてきたのは、ゆいっち。
 だとすると…?
「なっちゃん…?」
 すぅ、と人魂が消え、下駄箱の陰からなっちゃんが出てきた。
「…正解…」
「…あっ」
 腰が抜けてしまった。
「いや~、あさみがあんまり怖がってるからさ、どうせならってね」
「え~、酷いよ二人とも~」
 ちょっと、涙ぐむ。
「…ふふ…、大成功…」
「だって…行く途中、マネキンが人に見えてびっくりしたんだもん…。それが動くしさ…」
 その瞬間、空気が凍った。
「え?な、なに言ってるの?マネキンが動いたなんて…そんな冗談」
「…非科学的…」
 カシャン。
 ピタリ、と私たちの動きが止まる。
 カシャン。
 そろり、と一点を見た。
 それは、あろうことか話しかけてきた!
『ねえ…、遊びましょう…?』
 悲鳴は、出なかった。
 ただ私たちは走って逃げ、なんとか家にたどり着いたことは覚えている。
 そして肝試しは金輪際やらないと誓った。
 一応、あとで話だけは探しておいた。
 曰く…
 あのマネキンが着ていた制服は、とある虐められていた女子高生のものだった。
 虐めを苦にして自殺した彼女の制服を、当時の先生方が忘れないように、とマネキンに着せたものみたい。
 けど、ずいぶん前のことなので、もうだれも覚えておらず、それで夜中動きまわり、友人を求めている、という怪談ができたそうだ………。

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