さらし文学賞
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平穏な曇り空

 白い雪が降ってきた。足元はふわふわとやわらかい。かわりに、堅固な土が地に沈んだ。
 寒い家の温かい台所には、砂糖と塩が並んでいる。同じ大きさで、同じ赤のふたがついたケースに入ってこちらを見ている。
 母が、買ってきた調味料をケースに移していた。さらさらと流し込まれた粒は、小さな山を作っていた。
「ただいま」
「おかえり」
「それ何?」
「砂糖」
母が満足げにリビングへ戻ってから、僕はケースに貼られたシールをそっとはがした。
買ってきた砂糖が本当に砂糖かどうか分からないのに、勝手に名前を付けてよいものだろうか。 
買ってきた塩が本当に塩かどうか分からないのに、勝手に名前を付けてよいものだろうか。
もしかしたら、砂糖は塩かもしれない。
もしかしたら、塩が砂糖かもしれない。

翌朝、僕は学校に逃げた。
「なぜしょっぱくない」
「なぜ甘いの」
好みの違う両親は、いつもと違う味の卵焼きに激怒した。お互いにお互いの矛先を向けあった。父は自分が正しいと思い、母も自分が正しいと思っている。
本当はどちらも間違っているのかもしれない。
父と母は離婚した。それぞれの考えは筋を通しているけれど、家族はもう壊れてしまった。

登校中、通学路でネコが死んでいた。
車道を歩いたネコが悪いのか、轢いた車が悪いのか。
動かぬネコは車を責めるか、自分を悔やむか。
かわいそうと呟く僕も、かつて車でネコを轢いた。

僕はセーターの袖をいじる癖がある。結び目がほどけ、ぷつぷつとほつれるのは見ていて楽しい。白い毛糸はただただ下に垂れる。どんどん短く袖が消え、ついに肩までむき出しになった。
へくしゅん。

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